AIの種類
世の中のAIの全体地図。種類と、それぞれの「正体(裏で動くモデル)」を整理する。
1-1まず大きく2つに分かれる ―「生成する」AIと「しない」AI
「AI」と一口に言っても中身はバラバラ。最初の分かれ道は、新しく作り出す「生成AI」と、識別・分類・予測する「従来型AI(識別系AI)」の2つ。出力の性質が根本的に異なる。
生成AI
文章・画像・音声・動画・コードを新しく作り出す。出力=新規のコンテンツ。
例:ChatGPT(文章)、画像生成、音声合成
従来型AI(識別系AI)
既存データを識別・分類・予測する。「これは何か」を当て、境界線を引く。出力=ラベル・数値・判定。
例:迷惑メール判定、顔認証、レコメンド、需要予測、異常検知、医療画像診断
従来型AIの各例と役割:迷惑メール判定=迷惑メールか否かの2分類/顔認証=登録した本人との照合/レコメンド=好みそうな商品・動画の予測/需要予測=発注・在庫の最適化/異常検知=製造ラインの検品/医療画像診断=画像からの異常箇所の指摘。
区分の一言:識別系=見分ける/当てる、生成系=生み出す/作る。いま世間が沸いている“AIブーム”は生成AIの話だが、検索や通販のおすすめ、スマホの顔認証など、身の回りには従来型AIも数多く動いている。
1-2アプリとモデルは別もの
ChatGPT・Claude・Gemini などは、AIを使うための「サービス(アプリ)」の名前。その裏側では GPT・Claude・Gemini といった「モデル(本体)」が動いている。
さらに、世の中の多くのAIアプリや業務サービスは、これらのモデルをAPIで呼び出して作られている。例:文書作成の補助、社内チャットボット、コード補助、検索・要約ツールなど。
つまり利用者から見ると「AIアプリ」に見えても、中身は「アプリ+API+モデル」という構造になっていることが多い。表に出ているアプリ名だけでなく、裏で動くモデルの種類まで見ていく。
ここからが本体。生成AIを「扱うもの(モダリティ)」ごとに並べ、裏でどんなモデルが動いているのかまで見ていく。各ジャンルの見方は共通で、入力→出力/正体(裏のモデル)/代表ツール/使いどころ。ツールのバージョンより「種類・役割」を軸に読むとよい(この分野は主役の入替が速い)。
2-1テキスト(LLM)大規模言語モデル
言葉 → 言葉(要約・翻訳・作文・調べ物・分析)
Transformer(2017年の論文「Attention is All You Need」が起点)。中核はAttention=文中で注目すべき語を判断する仕組み。文章生成の実態は「直前の文脈から次に来る確率が最も高い語を1語ずつ予測してつなげる」こと。
ChatGPT(GPT-5.5系)/ Claude(Fable 5・Opus 4.8・Sonnet 5 など)/ Gemini(3系)/ Ollama(ローカル実行) ※2026年7月時点
メール・資料の下書き、要約、翻訳、調べ物、相談相手。AI活用の入口。
OpenAI:ChatGPT / APIで使われる代表モデル
| モデル | 種類 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| GPT-5.5 | 文章・推論 | 複雑な推論、コーディング、専門業務の基準になるフラッグシップ。1M級文脈。 | 難しい文書、分析、設計、コード、長い資料の処理。 |
| GPT-5.4 mini / nano | 軽量LLM | 低コスト・低遅延の小型系。日常処理を高速に回しやすい。 | 要約、分類、短い下書き、大量処理、簡単な自動化。 |
GPT-5.6 は限定プレビューのため補足扱い。一般的な資料では GPT-5.5 を基準に置く。画像(GPT Image 2)・動画(Sora 2)は 2-2/2-6 で扱う。
Anthropic:Claudeで使われる代表モデル
| モデル | 種類 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| Claude Fable 5 | 最上位 | 最も高い能力を狙うモデル。長時間の推論・エージェント作業向け。1M文脈。 | 複雑な調査、長い業務、戦略検討、難しい分析。 |
| Claude Opus 4.8 | 高性能 | 複雑なエージェント型コーディング・企業業務向け。1M文脈。 | コード、設計、業務文書、企業利用。 |
| Claude Sonnet 5 | バランス | 速度と知能のバランスがよく、日常業務に使いやすい。1M文脈。 | 資料作成、要約、調査、コーディング補助。 |
| Claude Haiku 4.5 | 高速 | 最速・軽量。短い処理や大量処理に向く。200k文脈。 | 分類、抽出、チャット、低遅延処理。 |
Claude Mythos 5 は限定提供のため、通常の代表モデル表では補足扱い。
Google:Geminiで使われる代表モデル
| モデル | 種類 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| Gemini 3.5 Flash | 文章・推論 | Gemini 3系の安定版。エージェント作業やコーディングで高い性能を狙う。 | 調査、文章作成、業務支援、コーディング。 |
| Gemini 3.1 Pro | 高性能 | 高度な推論、複雑な問題解決、エージェント作業向けのプレビュー。 | 難しい分析、設計、複雑なタスク分解。 |
画像(Nano Banana 2)・動画(Veo 3.1)は 2-2/2-6 で扱う。
ローカルで使えるAI:Ollamaで動かす代表モデル
| モデル/ツール | 種類 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| Ollama | 実行ツール | Mac / Linux / Windowsで、モデルを手元PCに入れて動かすための道具。 | 社内検証、学習、ネットに出しにくい文章の試作。 |
| gpt-oss 20B / 120B | OpenAI系 | OpenAIのオープンウェイトモデル。推論、エージェント、開発用途を意識。 | ローカル推論、開発支援、カスタム検証。 |
| Gemma 4 | Google系 | テキスト・画像入力に対応する軽量/中型のローカル向けモデル群。 | 画像を含む確認、PC上での試作、教育用途。 |
| Qwen 3 / Llama / DeepSeek-R1 | オープン系 | サイズや得意分野が異なる定番のオープンモデル。用途に合わせて選ぶ。 | 文章生成、推論、コード、比較検証。 |
ローカルAIは「クラウドAIの完全な代替」ではなく、コスト、機密性、実験しやすさを重視するときの選択肢。
2-2画像生成言葉から画像
テキスト指示 → 画像
代表的な方式は拡散モデル(Diffusion)。学習画像に少しずつノイズを加える過程を逆にたどり、純粋なノイズから不要分を段階的に取り除いて画像を復元する。ただし画像生成は一枚岩ではなく、OpenAI の GPT Image 2 のように専用モデルとして提供されるものもある。
Midjourney V8.1/ChatGPT画像・OpenAI API(GPT Image 2)/Gemini画像(Nano Banana 2)/Adobe Firefly/Stable Diffusion 3.5/FLUX.2
資料の挿絵、バナー、SNS画像、モックアップ。
Adobe Firefly は学習データをライセンス済み中心にした商用配慮の設計で、法人業務で選ばれやすい。
画像生成の代表モデル・ツール
| モデル/ツール | 系統 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| GPT Image 2 | OpenAI | 画像生成・編集の専門モデル。ChatGPT から(画像機能)や OpenAI API で使える。 | 資料挿絵、バナー、画像修正、商品イメージ。 |
| Nano Banana 2 / Pro | 画像生成・編集の系列(高速版〜高品質版)。Gemini から画像機能として使える。 | 画像制作、デザイン案、ビジュアル素材。 | |
| Midjourney V8.1 | 専用サービス | 写実感、雰囲気、ライティングに強い画像生成サービス。 | ビジュアル案、広告素材、世界観の検討。 |
| Adobe Firefly | 制作向け | Adobe製品連携と商用配慮が強み。企業・制作現場で使いやすい。 | デザイン業務、ブランド素材、Adobeワークフロー。 |
| Stable Diffusion 3.5 / FLUX.2 | オープン/高性能 | ローカル実行や細かな調整に向くモデル群。自由度が高い。 | 研究、検証、カスタム画像生成、ローカル環境。 |
GPT Image 2(ChatGPT)・Nano Banana 2(Gemini)は、チャットサービスの画像機能として組み込まれており、文章のやり取りの延長で画像を作れる。
2-3画像認識(読み取り)画像・写真を読み取る
写真・図・スクショ → 説明・分析・情報抽出
かつて独立していたビジョンモデルが、現在はLLMに統合(Vision-Language Model)。画像を数値表現に変換し、「見て・読んで・答える」を一体で行う。文字認識(OCR)もここに含まれる――かつては専用の従来型AIだったが、今は画像認識の一機能。
ChatGPT/Claude/Gemini に画像を貼るだけ(専用ツール不要)
OCR(文字認識)=手書きメモやスクショの文字起こし、請求書・名刺・レシートのデータ化。ほかにグラフ・図の読み取り、エラー画面の解読。
画像認識・読み取りの代表モデル・ツール
| モデル/ツール | 系統 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT / GPT-5.5 | VLM | 画像、表、スクショを見て説明・要約・分析できる。 | 図表の読み取り、エラー画面の相談、画像付き文書。 |
| Claude | VLM | 長い資料や文書画像の読み取りに使いやすい。 | PDF、契約書、業務資料、OCR後の整理。 |
| Gemini | マルチモーダル | 画像に加え、音声・動画を含む横断的な理解に強い。 | 動画・画像を含む調査、現場写真の確認。 |
| OCR専用サービス | 従来型AI | 帳票・請求書などの定型読み取りに強い。 | 経理、申請書、名刺、レシートのデータ化。 |
2-4音声合成(TTS)・認識(STT)
合成(TTS)=文章 → 音声(読み上げ)/認識(STT)=音声 → 文章(文字起こし)。向きが真逆。
合成=ElevenLabs(Eleven v3、感情タグで抑揚制御)/認識=Whisper(large-v3、オープンソース)・ElevenLabs Scribe(話者分離)
合成=ナレーション、マニュアルの読み上げ、多言語アナウンス/認識=議事録、取材の書き起こし、字幕、音声メモのテキスト化(話者分離で「誰の発言か」も整理)。
音声の代表モデル・ツール
| モデル/ツール | 種類 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| Whisper large-v3 | STT | 音声を文字にするオープンソース系の定番。 | 会議録、取材、字幕、自己ホスト検証。 |
| ElevenLabs Scribe | STT | 文字起こしに加えて、話者分離に対応。 | 複数人会議、インタビュー、議事録。 |
| Eleven v3 | TTS | 感情タグで抑揚や話し方を制御しやすい音声合成。 | ナレーション、教材、案内音声。 |
| Realtime / Audio系 | 会話音声 | 低遅延で話す・聞く体験を作る音声AI。 | 音声チャット、接客、通話型アシスタント。 |
2-5音楽生成曲を作る
テキスト・歌詞 → 歌唱+伴奏つきのフル楽曲
Suno(v5.5)/Udio/AIVA(劇伴・MIDI書き出し)/ElevenLabs Music
動画・ポッドキャストのBGM、ジングル、店舗・イベントの環境音楽。
音楽生成の代表モデル・ツール
| モデル/ツール | 種類 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| Suno v5.5 | 歌もの | 歌詞と指示から、歌唱つきの楽曲を作りやすい。 | SNS動画、デモ曲、ジングル案。 |
| Udio | 歌もの | 楽曲生成に強いが、提供形態や権利状況の確認が重要。 | 楽曲案、歌入りBGM、試作。 |
| AIVA | 劇伴/インスト | インスト曲や劇伴、MIDI書き出しに向く。 | 動画BGM、ゲーム音楽、店舗BGM。 |
| ElevenLabs Music | 音楽生成 | 音声AI系サービスから拡張された音楽生成。 | 短いBGM、効果的な音素材の試作。 |
2-6動画生成言葉から映像
テキスト・画像 → 短い動画。最近は映像と音声を一体で生成できる。
拡散モデルの動画版。ノイズからの復元を時間軸方向に拡張したもの。
OpenAI Sora 2/Google Veo 3.1/Kling 3.0/Runway Gen-4.5/Seedance 2.0
プロモ・SNSショート動画、商品説明、企画のイメージ映像、研修映像。
動画生成の代表モデル・ツール
| モデル/ツール | 系統 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| Sora 2 / Pro | OpenAI | テキスト・画像・動画参照から短い動画を生成・編集できる。 | 企画動画、説明動画、広告案。 |
| Veo 3.1 | 高品質な映像生成と音声一体生成が強み。 | 映像制作、商品紹介、プロモーション。 | |
| Runway Gen-4.5 | 制作向け | 動画生成と編集ワークフローをまとめやすい。 | 映像編集、短尺動画、クリエイティブ制作。 |
| Kling 3.0 / Seedance 2.0 | 動画特化 | 短尺動画の生成品質や動きの自然さを競うモデル群。 | SNS動画、コンセプトムービー、比較検証。 |
2-7コード生成・PC操作AIエージェント
指示 → プログラム生成に加え、ファイル操作・調査・作業までを自律実行。
LLM+ツール利用(tool use)。モデルがタスクを分解し、ファイル編集・コマンド実行・ブラウザ操作などの外部ツールを自律的に呼び出す。さらにPC操作(computer use)で、人間と同じようにアプリを操作する。
Claude Code/GitHub Copilot/Cursor/Devin
プログラミング、ファイル整理、Webからの情報収集・入力、定型事務の自動化。非エンジニアの業務にも波及(RPAの後継)。
コード生成・PC操作の代表ツール
| ツール | 種類 | 特徴 | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| Claude Code | 開発エージェント | コードベースを読み、編集・実行・確認まで進める。 | 実装、修正、リファクタ、調査。 |
| GitHub Copilot | IDE補助 | エディタ内で補完・説明・修正を支援する。 | 日常的なコーディング、レビュー補助。 |
| Cursor | AI IDE | エディタ全体がAI利用を前提に設計されている。 | 複数ファイル編集、仕様からの実装。 |
| Devin | 自律型 | タスク単位で調査から実装まで進めるAIエンジニア型。 | 開発タスクの委任、検証、プロトタイプ。 |
3-1キーワード:マルチモーダル
ここまで種類ごとに分けて説明してきたが、最近はその境界が溶けつつある。マルチモーダル=1つのAIで文字・画像・音声(一部は動画)を扱うこと。
- 現状:「理解」のマルチモーダルはほぼ全社標準。主要AI(Claude・ChatGPT・Gemini)で当たり前に。
- 「LLM=文字だけ」という理解はもう古い。
3-2AIの全体像 ― 機械学習・ディープラーニング
生成AIも従来型AIも、同じ土台の上に立つ。その土台が「機械学習」、中核技術が「ディープラーニング(深層学習)」。
- 機械学習:データからパターンを自動的に学び、予測・判断する手法。
- ディープラーニング:機械学習の一分野で、深層ニューラルネットワークを用いる手法。
- 注意:「生成AI=ディープラーニング」ではない(同義ではない)。
ここでは位置関係だけ掴めれば十分。
参考・出典(2026年7月時点)
- 生成AIと従来型AIの違い(クラウドコンタクトセンター/HubSpot Japan/AI総研)
- AI・機械学習・深層学習の関係(AIkentei ほか)
- Models / GPT-5.5 Model(OpenAI API 公式)/Models overview(Anthropic 公式)/Models(Gemini API 公式)/Ollama Library・Download(Ollama 公式)
- Attention Is All You Need 解説(Grune AI)/LLMの仕組み(Salesforce)
- Midjourney 公式 Version/GPT Image 2 Model・Image generation(OpenAI API 公式)/Firefly gen-AI approach(Adobe 公式)/Stable Diffusion 3.5(Stability AI)
- Eleven v3(ElevenLabs 公式)/Whisper large-v3(Hugging Face)
- Warner×Suno 和解(Forbes)/UMG×Udio 和解(Billboard)/Music AI Lawsuits Tracker 2026(Chartlex)
- Video generation with Sora(OpenAI API 公式)/Veo 3.1(Google DeepMind)
- Claude computer use(CNBC)/Best AI Coding Agents 2026(Blink)
※ モデルのバージョン・提供状況・訴訟状況は変化が速い。配布前に再確認する。