AIの種類

世の中のAIの全体地図。種類と、それぞれの「正体(裏で動くモデル)」を整理する。

2026年7月時点
第 1 部 まず全体像 ― 生成AIと従来型AI AIは大きく「生成する/しない」で分かれる。見えているアプリの裏で動く「モデル」まで見る。

1-1まず大きく2つに分かれる ―「生成する」AIと「しない」AI

「AI」と一口に言っても中身はバラバラ。最初の分かれ道は、新しく作り出す「生成AI」と、識別・分類・予測する「従来型AI(識別系AI)」の2つ。出力の性質が根本的に異なる。

生成AI

文章・画像・音声・動画・コードを新しく作り出す。出力=新規のコンテンツ。

例:ChatGPT(文章)、画像生成、音声合成

従来型AI(識別系AI)

既存データを識別・分類・予測する。「これは何か」を当て、境界線を引く。出力=ラベル・数値・判定。

例:迷惑メール判定、顔認証、レコメンド、需要予測、異常検知、医療画像診断

従来型AIの各例と役割:迷惑メール判定=迷惑メールか否かの2分類/顔認証=登録した本人との照合/レコメンド=好みそうな商品・動画の予測/需要予測=発注・在庫の最適化/異常検知=製造ラインの検品/医療画像診断=画像からの異常箇所の指摘。

区分の一言:識別系=見分ける/当てる、生成系=生み出す/作る。いま世間が沸いている“AIブーム”は生成AIの話だが、検索や通販のおすすめ、スマホの顔認証など、身の回りには従来型AIも数多く動いている。

イメージ 従来型AIは仕分け係・鑑定士(持ち込まれた物を○×で判定する係)。生成AIは書き手・描き手(ゼロから文章や絵を起こす創作担当)。

1-2アプリとモデルは別もの

ChatGPT・Claude・Gemini などは、AIを使うための「サービス(アプリ)」の名前。その裏側では GPT・Claude・Gemini といった「モデル(本体)」が動いている。

さらに、世の中の多くのAIアプリや業務サービスは、これらのモデルをAPIで呼び出して作られている。例:文書作成の補助、社内チャットボット、コード補助、検索・要約ツールなど。

つまり利用者から見ると「AIアプリ」に見えても、中身は「アプリ+API+モデル」という構造になっていることが多い。表に出ているアプリ名だけでなく、裏で動くモデルの種類まで見ていく。

利用者 AIアプリ・サービス 文書作成補助/社内チャットボット/検索・要約ツール API で呼び出す モデル(本体) GPT/Claude/Gemini/画像生成モデル/音声モデル
利用者に見えるのは「アプリ」。その下で API を通じて「モデル(本体)」が動いている。
第 2 部 生成AIカタログ ― 種類と、その正体 生成AIをモダリティ(扱うもの)ごとに7ジャンルで並べ、裏で動くモデルまで見る。

ここからが本体。生成AIを「扱うもの(モダリティ)」ごとに並べ、裏でどんなモデルが動いているのかまで見ていく。各ジャンルの見方は共通で、入力→出力/正体(裏のモデル)/代表ツール/使いどころ。ツールのバージョンより「種類・役割」を軸に読むとよい(この分野は主役の入替が速い)。

テキスト LLM 画像生成 拡散モデル 画像認識 VLM 音声 音楽 動画 コード生成・PC操作 AIエージェント
生成AIの7ジャンル。この章では1ジャンルずつ、正体まで掘り下げる。

2-1テキスト(LLM)大規模言語モデル

入力→出力

言葉 → 言葉(要約・翻訳・作文・調べ物・分析)

正体

Transformer(2017年の論文「Attention is All You Need」が起点)。中核はAttention=文中で注目すべき語を判断する仕組み。文章生成の実態は「直前の文脈から次に来る確率が最も高い語を1語ずつ予測してつなげる」こと。

代表ツール

ChatGPT(GPT-5.5系)/ Claude(Fable 5・Opus 4.8・Sonnet 5 など)/ Gemini(3系)/ Ollama(ローカル実行) ※2026年7月時点

使いどころ

メール・資料の下書き、要約、翻訳、調べ物、相談相手。AI活用の入口。

きょうの 天気は  ← 直前の文脈から「次の語」の確率を計算し、高いものを選ぶ 晴れ 62% 22% 曇り 13%
LLMは「意味を理解して書く」より、次に最も自然な語を1つずつ当て続けている。
イメージ 超高精度の予測変換/連想ゲーム。Attentionは大事な語に引く蛍光ペン

OpenAI:ChatGPT / APIで使われる代表モデル

モデル種類特徴向く用途
GPT-5.5文章・推論複雑な推論、コーディング、専門業務の基準になるフラッグシップ。1M級文脈。難しい文書、分析、設計、コード、長い資料の処理。
GPT-5.4 mini / nano軽量LLM低コスト・低遅延の小型系。日常処理を高速に回しやすい。要約、分類、短い下書き、大量処理、簡単な自動化。

GPT-5.6 は限定プレビューのため補足扱い。一般的な資料では GPT-5.5 を基準に置く。画像(GPT Image 2)・動画(Sora 2)は 2-2/2-6 で扱う。

Anthropic:Claudeで使われる代表モデル

モデル種類特徴向く用途
Claude Fable 5最上位最も高い能力を狙うモデル。長時間の推論・エージェント作業向け。1M文脈。複雑な調査、長い業務、戦略検討、難しい分析。
Claude Opus 4.8高性能複雑なエージェント型コーディング・企業業務向け。1M文脈。コード、設計、業務文書、企業利用。
Claude Sonnet 5バランス速度と知能のバランスがよく、日常業務に使いやすい。1M文脈。資料作成、要約、調査、コーディング補助。
Claude Haiku 4.5高速最速・軽量。短い処理や大量処理に向く。200k文脈。分類、抽出、チャット、低遅延処理。

Claude Mythos 5 は限定提供のため、通常の代表モデル表では補足扱い。

Google:Geminiで使われる代表モデル

モデル種類特徴向く用途
Gemini 3.5 Flash文章・推論Gemini 3系の安定版。エージェント作業やコーディングで高い性能を狙う。調査、文章作成、業務支援、コーディング。
Gemini 3.1 Pro高性能高度な推論、複雑な問題解決、エージェント作業向けのプレビュー。難しい分析、設計、複雑なタスク分解。

画像(Nano Banana 2)・動画(Veo 3.1)は 2-2/2-6 で扱う。

ローカルで使えるAI:Ollamaで動かす代表モデル

モデル/ツール種類特徴向く用途
Ollama実行ツールMac / Linux / Windowsで、モデルを手元PCに入れて動かすための道具。社内検証、学習、ネットに出しにくい文章の試作。
gpt-oss 20B / 120BOpenAI系OpenAIのオープンウェイトモデル。推論、エージェント、開発用途を意識。ローカル推論、開発支援、カスタム検証。
Gemma 4Google系テキスト・画像入力に対応する軽量/中型のローカル向けモデル群。画像を含む確認、PC上での試作、教育用途。
Qwen 3 / Llama / DeepSeek-R1オープン系サイズや得意分野が異なる定番のオープンモデル。用途に合わせて選ぶ。文章生成、推論、コード、比較検証。

ローカルAIは「クラウドAIの完全な代替」ではなく、コスト、機密性、実験しやすさを重視するときの選択肢。

クラウドAI ChatGPT / Claude / Gemini 高性能・更新が速い ネット接続と契約が前提 ローカルAI Ollama + 手元のモデル 手元PCで動かせる 性能はPC性能に左右される 用途で使い分ける
クラウドAIは高性能で更新が速い。ローカルAIは手元PCで動かせるが、速度や扱えるモデルはPC性能に左右される。

2-2画像生成言葉から画像

入力→出力

テキスト指示 → 画像

正体

代表的な方式は拡散モデル(Diffusion)。学習画像に少しずつノイズを加える過程を逆にたどり、純粋なノイズから不要分を段階的に取り除いて画像を復元する。ただし画像生成は一枚岩ではなく、OpenAI の GPT Image 2 のように専用モデルとして提供されるものもある。

代表ツール

Midjourney V8.1/ChatGPT画像・OpenAI API(GPT Image 2)/Gemini画像(Nano Banana 2)/Adobe Firefly/Stable Diffusion 3.5/FLUX.2

使いどころ

資料の挿絵、バナー、SNS画像、モックアップ。

補足

Adobe Firefly は学習データをライセンス済み中心にした商用配慮の設計で、法人業務で選ばれやすい。

純粋なノイズ 画像
拡散モデル:砂嵐(ノイズ)から不要分を段階的に取り除き、絵を「彫り出す」。
イメージ 砂嵐(ノイズ)=大理石、AI=彫刻家。プロンプトを設計図に、余分なノイズを削り落として像を彫り出す。「白紙に描き足す」のではなく「ノイズから不要分を除く」逆転の発想。

画像生成の代表モデル・ツール

モデル/ツール系統特徴向く用途
GPT Image 2OpenAI画像生成・編集の専門モデル。ChatGPT から(画像機能)や OpenAI API で使える。資料挿絵、バナー、画像修正、商品イメージ。
Nano Banana 2 / ProGoogle画像生成・編集の系列(高速版〜高品質版)。Gemini から画像機能として使える。画像制作、デザイン案、ビジュアル素材。
Midjourney V8.1専用サービス写実感、雰囲気、ライティングに強い画像生成サービス。ビジュアル案、広告素材、世界観の検討。
Adobe Firefly制作向けAdobe製品連携と商用配慮が強み。企業・制作現場で使いやすい。デザイン業務、ブランド素材、Adobeワークフロー。
Stable Diffusion 3.5 / FLUX.2オープン/高性能ローカル実行や細かな調整に向くモデル群。自由度が高い。研究、検証、カスタム画像生成、ローカル環境。

GPT Image 2(ChatGPT)・Nano Banana 2(Gemini)は、チャットサービスの画像機能として組み込まれており、文章のやり取りの延長で画像を作れる。

2-3画像認識(読み取り)画像・写真を読み取る

入力→出力

写真・図・スクショ → 説明・分析・情報抽出

正体

かつて独立していたビジョンモデルが、現在はLLMに統合(Vision-Language Model)。画像を数値表現に変換し、「見て・読んで・答える」を一体で行う。文字認識(OCR)もここに含まれる――かつては専用の従来型AIだったが、今は画像認識の一機能。

代表ツール

ChatGPT/Claude/Gemini に画像を貼るだけ(専用ツール不要)

使いどころ

OCR(文字認識)=手書きメモやスクショの文字起こし、請求書・名刺・レシートのデータ化。ほかにグラフ・図の読み取り、エラー画面の解読。

画像認識・読み取りの代表モデル・ツール

モデル/ツール系統特徴向く用途
ChatGPT / GPT-5.5VLM画像、表、スクショを見て説明・要約・分析できる。図表の読み取り、エラー画面の相談、画像付き文書。
ClaudeVLM長い資料や文書画像の読み取りに使いやすい。PDF、契約書、業務資料、OCR後の整理。
Geminiマルチモーダル画像に加え、音声・動画を含む横断的な理解に強い。動画・画像を含む調査、現場写真の確認。
OCR専用サービス従来型AI帳票・請求書などの定型読み取りに強い。経理、申請書、名刺、レシートのデータ化。

2-4音声合成(TTS)・認識(STT)

入力→出力

合成(TTS)=文章 → 音声(読み上げ)/認識(STT)=音声 → 文章(文字起こし)。向きが真逆。

代表ツール

合成=ElevenLabs(Eleven v3、感情タグで抑揚制御)/認識=Whisper(large-v3、オープンソース)・ElevenLabs Scribe(話者分離)

使いどころ

合成=ナレーション、マニュアルの読み上げ、多言語アナウンス/認識=議事録、取材の書き起こし、字幕、音声メモのテキスト化(話者分離で「誰の発言か」も整理)。

音声の代表モデル・ツール

モデル/ツール種類特徴向く用途
Whisper large-v3STT音声を文字にするオープンソース系の定番。会議録、取材、字幕、自己ホスト検証。
ElevenLabs ScribeSTT文字起こしに加えて、話者分離に対応。複数人会議、インタビュー、議事録。
Eleven v3TTS感情タグで抑揚や話し方を制御しやすい音声合成。ナレーション、教材、案内音声。
Realtime / Audio系会話音声低遅延で話す・聞く体験を作る音声AI。音声チャット、接客、通話型アシスタント。

2-5音楽生成曲を作る

入力→出力

テキスト・歌詞 → 歌唱+伴奏つきのフル楽曲

代表ツール

Suno(v5.5)/Udio/AIVA(劇伴・MIDI書き出し)/ElevenLabs Music

使いどころ

動画・ポッドキャストのBGM、ジングル、店舗・イベントの環境音楽。

音楽生成の代表モデル・ツール

モデル/ツール種類特徴向く用途
Suno v5.5歌もの歌詞と指示から、歌唱つきの楽曲を作りやすい。SNS動画、デモ曲、ジングル案。
Udio歌もの楽曲生成に強いが、提供形態や権利状況の確認が重要。楽曲案、歌入りBGM、試作。
AIVA劇伴/インストインスト曲や劇伴、MIDI書き出しに向く。動画BGM、ゲーム音楽、店舗BGM。
ElevenLabs Music音楽生成音声AI系サービスから拡張された音楽生成。短いBGM、効果的な音素材の試作。
注意 学習データの権利が最大の論点。大手レコード会社との和解が進行中(ユニバーサル×Udio、ワーナー×Suno)だが、ソニーは係争を継続しており、2026年7月に重要な判断が見込まれる。商用利用の際は、各サービスの規約とエクスポート可否(ダウンロード不可のツールもある)を必ず確認する。

2-6動画生成言葉から映像

入力→出力

テキスト・画像 → 短い動画。最近は映像と音声を一体で生成できる。

正体

拡散モデルの動画版。ノイズからの復元を時間軸方向に拡張したもの。

代表ツール

OpenAI Sora 2/Google Veo 3.1/Kling 3.0/Runway Gen-4.5/Seedance 2.0

使いどころ

プロモ・SNSショート動画、商品説明、企画のイメージ映像、研修映像。

動画生成の代表モデル・ツール

モデル/ツール系統特徴向く用途
Sora 2 / ProOpenAIテキスト・画像・動画参照から短い動画を生成・編集できる。企画動画、説明動画、広告案。
Veo 3.1Google高品質な映像生成と音声一体生成が強み。映像制作、商品紹介、プロモーション。
Runway Gen-4.5制作向け動画生成と編集ワークフローをまとめやすい。映像編集、短尺動画、クリエイティブ制作。
Kling 3.0 / Seedance 2.0動画特化短尺動画の生成品質や動きの自然さを競うモデル群。SNS動画、コンセプトムービー、比較検証。
注意 動画生成は特に主役の入替が速い分野。個別ツール名より「拡散モデルの動画版」「映像と音声を一体で生成するモデル」という種類で捉えておくと、流行が変わっても迷わない。
イメージ 静止画の拡散が「1枚の絵を彫る」なら、動画版はパラパラ漫画の全ページを、前後のつながりを保ちながら同時に彫る。音声一体生成は「無声映画にアフレコ」から「役者が最初から喋りながら演じる」への移行。

2-7コード生成・PC操作AIエージェント

入力→出力

指示 → プログラム生成に加え、ファイル操作・調査・作業までを自律実行

正体

LLM+ツール利用(tool use)。モデルがタスクを分解し、ファイル編集・コマンド実行・ブラウザ操作などの外部ツールを自律的に呼び出す。さらにPC操作(computer use)で、人間と同じようにアプリを操作する。

代表ツール

Claude Code/GitHub Copilot/Cursor/Devin

使いどころ

プログラミング、ファイル整理、Webからの情報収集・入力、定型事務の自動化。非エンジニアの業務にも波及(RPAの後継)。

コード生成・PC操作の代表ツール

ツール種類特徴向く用途
Claude Code開発エージェントコードベースを読み、編集・実行・確認まで進める。実装、修正、リファクタ、調査。
GitHub CopilotIDE補助エディタ内で補完・説明・修正を支援する。日常的なコーディング、レビュー補助。
CursorAI IDEエディタ全体がAI利用を前提に設計されている。複数ファイル編集、仕様からの実装。
Devin自律型タスク単位で調査から実装まで進めるAIエンジニア型。開発タスクの委任、検証、プロトタイプ。
イメージ 「コードを書くだけの新人」から、「自分で調べ・手を動かし・確認まで回す自走する部下」へ。computer use は、画面とマウス・キーボードを渡されたデジタル派遣スタッフ
第 3 部 全体像を押さえる ― マルチモーダルと土台 種類の境界が溶ける「マルチモーダル」と、すべての土台にある機械学習・ディープラーニング。

3-1キーワード:マルチモーダル

ここまで種類ごとに分けて説明してきたが、最近はその境界が溶けつつある。マルチモーダル=1つのAIで文字・画像・音声(一部は動画)を扱うこと。

文字 画像 音声 1つのAI まとめて理解 回答
文章を書かせ、写真を見せて質問し、声で話す ―― を1つのAIがまとめて扱う。

3-2AIの全体像 ― 機械学習・ディープラーニング

生成AIも従来型AIも、同じ土台の上に立つ。その土台が「機械学習」、中核技術が「ディープラーニング(深層学習)」。

AI(人工知能) 機械学習 ディープ ラーニング
包含関係。AI ⊃ 機械学習 ⊃ ディープラーニング。生成AI・従来型AIは一番奥の技術の「2つの使い道」。
生成AI / 従来型AI(私たちが使うAI)
ディープラーニング(深層学習) ― 中核技術
機械学習 ― データからパターンを学ぶ仕組み

ここでは位置関係だけ掴めれば十分。

イメージ 同心円/マトリョーシカ。外から順に AI → 機械学習 → ディープラーニング。生成AIと従来型AIは、その一番奥の技術を使った「2つの使い道」。

参考・出典(2026年7月時点)

※ モデルのバージョン・提供状況・訴訟状況は変化が速い。配布前に再確認する。